3次元での熱変形・熱応力解析はDOWAテクノエンジでも初めての試みだったため、解析ソフトの使用に適した高スペックなパソコンの選定からモデリング、解析、結果の検証までのすべてが試行錯誤の連続でした。また、3次元での解析を行った結果、当初予定していた補強では熱応力への対応として不十分であることが明らかに……。設計を終えなくてはいけない期限が迫っていましたが、プロジェクトリーダーや関係上長などに相談し、補強計画を最初からやり直すことにしました。時間のないなかで、補強の形状や構造について仮説を立ててはモデルの解析・検証を繰り返し、最終的には十分な補強を行える形状・構造を定めることができました。大変な苦労はしましたが、お客様にとても喜んでもらえたことが嬉しかったですね。
project story
01
熱変形・熱応力の
3次元解析に挑戦し、
劣化を抑えた2次焼却炉へ。
2011年入社
エンジニアリング事業部 機械系
工学部 機械工学科 卒
プロジェクト概要
このプロジェクトの目的は、産業廃棄物焼却処理設備の2次焼却炉※上部を新たなものへと更新すること。従来の2次焼却炉は熱変形&腐食による劣化が進み、応急処置での補修も難しくなっていました。お客様からのご要望は、可能な限り劣化を防ぐ構造にし、メンテナンスの負担を低減するとともに次の更新までの間隔を長期化したいというもの。そこで、DOWAテクノエンジでは初となる3次元での熱変形・熱応力解析を活かした設計を実施することになり、設計担当者および現場所長としてプロジェクトに参加しました。
※廃棄物焼却によって発生する排気ガスの再燃焼を行い、ダイオキシンなどの有害物質が発生しないように完全燃焼させる設備。
プロジェクト工程
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調査企画
2ヶ月
既存の2次焼却炉上部の状態についてお客様から丁寧にヒアリングするとともに、過去の設備資料を確認。また、3Dスキャンで取得した点群データによって変形の状態を把握し、変形にいたったメカニズムも推測しました。
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設計
8ヶ月
最初に2次焼却炉上部の板厚や補強部分について理論計算を実施。強度を計算し、大まかな構造を設計しました。その後3D解析ソフトを用いて、3次元での線形静応力解析/熱分布解析/熱変形・熱応力解析を実施し、板厚・補強・支持部分の詳細や熱応力が発生しやすい箇所の形状を決定。熱応力の集中を回避するための設計を行い、図面に落とし込んでいきました。
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調達
1ヶ月
2次焼却炉本体や架台の部品は協力会社へ制作を依頼。完成までの制作管理や完成後の工場検査を行いました。また、配管材なども別途調達しました。
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施工
7ヶ月
2次焼却炉上部は運搬が不可能なサイズであるため、現地で組み立てることに。組み立て後に既存設備を解体し、更新を行いました。これらの施工を設備の計画停止期間中に行う必要があったため、その他のさまざまな工事とスケジュール調整を実施したうえで綿密な工事計画を策定しました。そして、工事期間中は安全に作業ができるように、他の工事を行う会社と日々打ち合わせを行い、作業工程を調整。特に2次焼却炉上部の組み立ては、500トン吊りの巨大クレーンを使用したミスの許されない作業だったので、細心の注意を払って進めていきました。
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試運転・操業
0.5ヶ月
2次焼却炉を立ち上げるまでの立ち会い確認を行いました。また、立ち上げ後は上部の温度と熱変形を計測し、3次元解析と相違のないことを確認しました。初めての解析手法を活かしたプロジェクトを成功させることができ、非常に大きな達成感を味わえました。
大きな苦労を伴った解析を活かし、
十分な補強を実現できた
「諦めなければ必ず成し遂げられる」
そんな確信を得られた
大変な思いをした分このプロジェクトを終えたときには、諦めずに考え続け、一つひとつ問題を解決していけば必ず目標を成し遂げられるという自信がつきました。また、3次元での熱変形・熱応力解析がDOWAテクノエンジの新たな強みのひとつになったと思うので、そうした貢献ができたこともこのプロジェクトの大きな成果だと感じています。実際に、その後の亜鉛製造設備の建設プロジェクトなどでも3次元での熱変形・熱応力解析の手法が活かされました。今後も新たな設計手法に積極的に挑戦し、DOWAテクノエンジの技術力を高め、変化し続ける世の中のニーズに応えていきたいです。
この仕事の醍醐味は、
自分の設計が形になっていくこと
学生時代の講義やインターンシップで設計のおもしろさを知り、就職活動では設計職を志望するようになりました。しかし、設計だけを仕事にしていくのが本当に自分に適しているのかを深く自問自答したときに、実は自分の設計が形になっていく過程に最もおもしろさを感じていることに気づいたのです。その結果、調査企画から設計、施工管理、試運転にいたるまでのすべての工程に関われるDOWAテクノエンジのプラントエンジニアの仕事が自分には最適だと思いました。プラント建設に関する幅広い領域の業務に携わり、専門性の高い知識やスキルを得て、希少性の高いスペシャリストとなれることも入社を志望する大きな要因になりましたね。
DOWAテクノエンジの
プラントエンジニアは、
社会貢献を実感し続けられる仕事
自分が頭に描いたものが実際に形になり、それがお客様や社会のために役立つことがこの仕事の醍醐味だと感じています。車やスマートフォンといった製品に欠かせない素材の製造設備や、有害物質を処理する環境関連設備を建設するなど、DOWAテクノエンジの事業は持続可能な社会に不可欠です。この仕事を続けている限りは、自身の社会貢献を実感できるはずです。そして、プラント建設プロジェクトはさまざまな人と協力し、コミュニケーションを取りながら進めていくもの。関わる人が多い分調整などの苦労もありますが、大きなプロジェクトを成功させた達成感を多くの人と共有できるのも、この仕事の大きなやりがいだと思います。ぜひみなさんにも、プロジェクトを終えたときの達成感を味わってほしいですね。